FLAKKA

雑記

私は人気作家。

今日もマネージャー兼彼氏は同情を誘うツイートを今日もしてくれている。絵文字は甘ったるく胸焼けするほどにたくさんデコレーションする。訳の分からない言葉を飾りつけてキャラクターも完璧。

 

極め付けにその辺にあった生活用品を踏みつけ、壊し、アップロードした。不幸の供給を定期的にしないといけないのだ。

妄信しているオタクさん達は本当に好き。複数アカウントを使っていいねをくれる信者もいる。憐れまれるほどわたしは輝けるし、画面の向こうのオタクさんも気軽に人を憐れむ余裕のある俺に満足できるのでしょう?なんて天才的なんだろうといつも自画自賛してしまう。

SNSを開く前に買ってきた可愛らしい洋菓子は写真だけ撮って捨てた。口の中まで甘ったるくされたくないのだ。同情されやすく、かわいいわたしを作り続けるのも結構大変なのです。

 

わたしは今日のテーマに合わせた落書きを一枚あげる。

絵を描くのは好きだけど基本的に完成度は低くていい。それでも絵を見てほしい。現実の社会は絵を見てほしいだけの私を切り離した。

絵だけ見てほしいのにこの世界は背景も必要とされるので、不幸な女を演じている。仮想世界でも絵だけ見て欲しくても完全に見てもらえないのを根底では理解しているので、つまるところ結局わたしは不幸な女だと思う。

今日も同情しか欲しくないし、暗いテーマがいい。ものが壊れてしまって悲しい気持ち、ぐちゃぐちゃになった洋菓子、病んでしまった女の子。わたし。

絵に映る者は欲に目が眩んで、ひどく濁っている。

今日も傑作だ、傑作だと信者はもて囃していた。

 

制作を始めていくばくか後、不幸ビジネスは板についてきた。

最近順調に信者は増え続け、マネージャー兼の彼氏が対応していたが、DMには支えるから出会いたいという信者が溢れ信用問題に関わりそうで、彼氏に対応はやめてもらった。

不相応に上がり続けるわたしの収入に頼りっぱなしの彼氏は、わたしにお金を無心して競馬に行った。

今日は彼氏が賭けた馬の話をネットでした。

そんな状況がとても不幸だと思ったので、今日も作品はとても良いものになったと思う。

 

数ヶ月後。

わたしは一枚の絵を豪勢な食事がいくらかできる値で引き取ってもらう事に成功した。

元彼氏は信者のひとりとなって直接応援しにきてくれる。絵しか描きたくなさすぎて、お金を無心されるのがひどくつらくて、振ってしまったのだった。

こんなに不幸なのにその日を境に不幸だと思われなくなってしまった。

 

あなたは幸せものだ、幸せものだと一転して反応が変わってしまった。

世界が変わってしまった。今日もわたしは不幸なのに、これでは不幸なわたしの絵が描けない。

どうしていいか分からず、口いっぱいの甘ったるさが気持ち悪くて匙を投げた。跳ねた匙はグラスに当たり、その瞬間視界が赤く染まった。

 

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わたしは人気作家。

今日もマネージャー兼彼氏は同情を誘うツイートを今日もしてくれている。絵文字は甘ったるく胸焼けするほどにたくさんデコレーションするけど、話す内容は賭博ばかりになってしまったらしい。

絵に映る者は欲に目が眩んで、ひどく濁っていた。